「熟年離婚を考えているが、長年連れ添った妻に感謝の気持ちとして家を譲りたい。離婚前に名義変更すると『贈与税』がかかると聞いたが、税金がかからない特例はないのか…」
今回は、このように「妻への譲渡」を検討しつつも、税金の仕組みが複雑でどちらが得か分からず悩まれていた、大阪府のY様(50代男性)の事例をもとに解説します。
夫婦の間で不動産の名義を変更する際、最も気にしなければならないのが「税金(贈与税)」です。 通常、夫から妻へ家をタダで譲ると、それは「贈与」とみなされ、高額な贈与税がかかります。
しかし、一定の条件を満たしたご夫婦であれば、「おしどり贈与(贈与税の配偶者控除)」という特例を使って、無税(または低額)で名義変更できる場合があります。
ここで重要なのが、「離婚を見据えている場合、この特例を使うべきか、それとも離婚時の『財産分与』を使うべきか?」という判断です。 タイミングを間違えると、数十万円単位で税金等のコストが変わってしまうこともあります。
今回は、意外と知られていない「夫婦間贈与の特例」の仕組みと、離婚時における賢い使い分けについて解説します。
もくじ
家の名義を夫から妻へ移す場合、それが「いつ行われるか」によって、税務上の扱いが全く異なります。
「じゃあ、離婚後の財産分与一択では?」と思われるかもしれません。 しかし、Y様のように「まだ離婚は確定していないが、先に安心させてあげたい」という場合や、「相続対策」を兼ねている場合は、離婚前の贈与が検討されます。
もし、離婚前に(婚姻中に)名義変更をしたい場合、利用を検討すべきなのが「贈与税の配偶者控除の特例」です。通称「おしどり贈与」とも呼ばれます。
この特例は、以下の条件をすべて満たす場合に利用できます。
通常、贈与税の非課税枠は年間110万円しかありません。 しかし、この特例を使えば、基礎控除110万円 + 配偶者控除2,000万円 = 合計2,110万円までの評価額の不動産なら、贈与税ゼロで名義変更が可能です。
※注意:不動産の価値は「固定資産税評価額」で計算します。市場価格が3,000万円でも、評価額が1,500万円なら全額非課税になります。
では、Y様のように離婚を視野に入れている場合、どちらが得なのでしょうか? 実は、トータルのコスト(諸費用)で見ると、「離婚後の財産分与」の方が有利なケースが多いです。
ここが大きな落とし穴です。贈与税がゼロでも、名義変更には「登録免許税」と「不動産取得税(地方税)」がかかります。
| 税金の種類 | 離婚前の贈与(特例使用) | 離婚後の財産分与 |
|---|---|---|
| 贈与税 | 2,110万円まで非課税 | 原則 非課税 |
| 不動産取得税 | 課税される | 原則 非課税(※) |
| 登録免許税 | 評価額の 2.0% | 評価額の 2.0% |
※財産分与の場合、不動産取得税は多くのケースで軽減または非課税になります(精算的な分与の場合)。 一方、贈与の場合はガッツリ課税されます。
Y様の場合、評価額は1,800万円でしたので、特例を使えば贈与税はかかりません。 しかし、試算の結果、「不動産取得税」が数十万円かかることが判明しました。
私たちはY様にこうアドバイスしました。
「今すぐ名義を変えたい強い理由がないのであれば、離婚協議書(公正証書)で『離婚時に家を譲る』と確約し、離婚成立後に『財産分与』として名義変更することをお勧めします」
これにより、Y様は無駄な数十万円の税金を払わずに済み、奥様にも納得いただける形で家を譲ることができました。
「夫婦間贈与の特例」は素晴らしい制度ですが、離婚においては万能ではありません。 状況によっては、あえて使わない方が得をするケースも多々あります。
この判断を誤ると、後から「税務署から通知が来た!」と慌てることになります。
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多くの銀行は、離婚に伴う単なる「名義変更」や「借り換え」を嫌がります。 スムーズに審査を通すコツは、「夫から妻へ、正式に家を売却する(元夫婦間売買)」という形をとることです。 これには不動産会社が作成する「重要事項説明書」「売買契約書」が必須です。銀行に行って断られる前に、まずは私たちにご相談ください。
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