内容的にもこれらのサイトでは当事者が直面する状況において「解決方法を提示して安心を提供する」というよりも「不安を募らせることで、自社のサービスの利用へと誘導」をしている内容のものが多い(といった印象です)ですね。司法書士も不動産会社も営利目的で事業をしているわけですから、それが悪いということではなく、当たり前とも言えますが。
「時間が経過すると任意売却はできなくなり、差押、競売となってしまう」 「今は家を売らないとしても、いずれ築年数が経過した時の売却は資産価値が大きく下がるから、今、売っておくべき」 「財産分与により家の名義を変更することは可能(だが、ローンが残っている家は銀行の承諾が必要だけれども、承諾は得られないので、リスクを承知の上、黙って名義の変更を行うことは可能)」等、要するに不動産会社にとっては「売却すること」、司法書士からすれば「財産分与」を勧める内容のものといった感じです。
そもそも、「離婚」によって家を売却することが「任意売却」ありきでの説明をされていることが一般の方にとってはよくわからないことだと思います。任意売却は「住宅ローンの返済ができなくなったとき、返済が残っていても金融機関の合意を得て不動産を売却すること」です。
離婚のケースによっては任意売却といった方法を選択しなければならない場合もあるかと思われます。要するに、お金に関することが離婚の理由の一つになっているといったケースは少なくないからです。然しながら、離婚 = 家の売却は任意売却 といった説明は適切とは言えません。
「離婚」と「任意売却」はセットではないものの、離婚の際に「お金のこと、経済的な背景が理由で離婚により家を売却するケースが少なくない」ことから、それに託けて不動産の売却の依頼を預かることを目的とした「売却物件募集の広告サイト」とも言えますし、司法書士が財産分与の手続きにより報酬を得るための集客として謳っているケースが目立ちます。
「離婚時は家を売却しないとヤバいですよ」「離婚時に家の名義変更は贈与税もかからず、財産分与により所有権の変更は可能ですよ」といったことを述べているわけです。
以前にもブログで触れていますが、ローンがある場合、財産分与だからと言えども所有権の移転(変更)には銀行(債権者)の承諾が必要です。その旨はローンの契約書に必ず記載がされており、実際に金融機関が「承諾」をするということはありません。ローンの契約と当事者の離婚の問題は何等、銀行にとっては関係の無い話であり、債務の履行に対して金融機関が譲歩したり、債務者の変更をするということは基本的に協力の上、行う必要がないことだからです。
それにもかかわらず、財産分与にて報酬を得たいと考えている司法書士のサイトの多くでは、「所有権の移転(変更)は技術的に大丈夫」
※そもそも司法書士に依頼をしなくても、素人でも法務局で教えてもらいながら行うことが可能なことであるため、正確には「技術的には素人でも可能といった表現が適切かもしれません。 や「延滞などがなければ銀行にばれることも無いが、バレた場合は一括での返済を求められる可能性もある」といったリスクを「司法書士」ではなく、あくまで「当事者」が負うといったことを踏まえた上で「黙って移転することは可能」といった記載が目立ちます。そもそも契約違反だけれども、バレなければ大丈夫ということを言っているのと同じですから、相談者さんのメリットよりも自己(司法書士)の報酬を優先した記載というのはモラルの上でも非常に問題です。
そもそも、一言で離婚による家の売買、家の名義変更、ローンの問題と言っても、ケースバイケースであり、当事者が採るべき最善の方法というものは複数の選択肢の中から検討をして最善の方法を採られるべきです。
不動産会社にとっては売買による仲介手数料や買取をした後、転売して利益を得るため、どうしても売却ありきの話になります。司法書士にとっては財産分与による報酬(離婚の協議に関しての相談は弁護士しか受けられませんので、司法書士は当事者間でまとまった内容を協議書として作成するということのみが可能です)を得るためなど、各自が自己の利益を得るためのポジショントーク(説明)を行っているにしか過ぎません。
離婚により問題となっている家のこと、残っているローンのことを一緒に考え、当事者の方にとってメリットが大きく最良な解決方法を提案することが本来、業種、職種に限らず求められるところではないかと思います。自身の利益を優先するとどうしても当事者にとっては不利益であることの顕著な例ではないかと思われます。
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